教師になりたいと思ったことがある。中学か高校か、たぶんその頃のこと。
ただどれほどの情熱があったかは確かでない。
「教師になりたい」と宣言することはなかったはずだが
あの頃、父親は女子が熱心に勉強することを嫌った。
特に実家は商売をしていたので、
「商売人の娘は、学問を究める必要などまったくない。」といつも言っていた。
商売人でなくても女子には高学歴は不要、むしろ邪魔だという考えの持ち主。
あの発言は、若い自分でもかなり抵抗があったし、そう言われれば却って
「勉強してやる」という気持ちがふつふつとわき上がった。
四年制の大学にも当然進学したかったが、これは費用もかかることで
長男次男がすぐそこに控えている身の私としては、百歩ゆずって短期大学に進学した。
(行かせてもらったと言うべきか)
短期大学では中学教員の2級免許が取得できた。
その頃には現実に目覚め、教師になることも自分に向いているかどうかを考えると
あやしい気がして来ていたが、教職課程を取り教育実習にも行った。
ちょっとした未練のようなものだ。
教育実習の2週間は貴重な体験だった。あの頃の中学生かわいかったし。
ホントは大好きな先生がいた母校に行きたかったけど、無様な姿をさらすことなくてよかったかも。
今思うと、日常会話も時としておかしい自分が、国語の教師になどならなくて正解だったもしれない。
それに近頃の保護者のモンスターぶりは目に余るところがあるようだし……。