あれこれ雑記帳

見たことや感じたことをとりとめもなくその日の気分で書きます。

女中さん

旧家では女中さんを抱えていることが多かった。
といっても実家に女中さんがいたのは、母がまだ若かった頃のはなしなので
その人のことについては私は知らない。

先日、実家の近くの家に仕えていた女中さんをみかけた。
北風の吹く夕暮れ時、その人は細い杖だけを頼りに力なく歩いてられた。
その家も今ではもうなく、年老いた奥さまは近くのマンションを買って1人で暮してられる。

住み込みで家族同然ではあるが、決して身内ではなく一線を画されている存在。
当家の娘さんの婚礼の日、白無垢姿で家を出られるところを見たが、
礼服姿の家族の後で彼女は普段着にエプロン姿だったのが思い出される。
家に入られた事情については知らないが、きっと仕えることがすべてであったのだろう。
しかし、家が衰退したとき、あっさり放り出される。(裸同然ということも耳にした)
しばらくは外で仕事をされていたが、今では身体も弱り生活保護を受けて1人で暮してられると聞く。

母と同じくらいの年で昔から近くに住んでられる方が、
「頼られても、わたしにはどうすることもできひん…」と話された。
人それぞれの人生を、どうこう言える立場にはないが、運の善し悪しとか宿命とかそんなものがあるのかもなぁ
と思えるのだった。