「その方の出生から死亡までの戸籍をもらってきて下さい」
相続の手続きにはそういったものが必要になる。今まで何度か役所に出向いてもらってきたことがあったが、今回また必要だということで「任しておいて」とばかりに区役所へ行ってきた。住民票の写しや印鑑証明ぐらいなら待つことも少しで、もらえるのだけど、戸籍関係は時間がかかる。
待っている間、観察していたのだが、窓口のむこうの事務所片隅で職員の人がのりとハサミを使って工作風な作業をしていた。そうか、古い書類をコピーしてそれを切り貼りするのか…。このデジタルの世の中においても戸籍だけはアナログなコピペだ。
「お待たせしました。これとこれとこれで3通の2,250円になります」
手数料もなかなか高い。
たとえば、残高がわずかな預金口座のために一揃いの書類をそろえるとしたら足が出ることになる。実際、相続人が口座の解約をしようとするともっとたくさんの書類が必要になることもある。「それならもういいです」と言いたくなることもある。
戸籍謄本をまじまじと見ていると、いろいろなことがわかってくる。
そして、たとえばキチ左衛門さんやシ乃のさん(仮名)などの存在がなければ、自分の存在もなかったということがわかる。見も知らぬ先祖だけど、何かを語りかけてきそうな気もして、読みにくい文字を目で追った。一時、ルーツを知ろう的なブームがあったが、こういう戸籍を元にして菩提寺や出生地をたずね歩く人がいるというのも少し分かる気がした。
隠居のため家督を譲るって何?とか、毎年離婚?…とか。
若くして病死している女性もいる。あ、この場所は今通っている大学病院だわ…とか。この人たちにみんなドラマがあったわけだ。
ここにはすべて自分につながる命の系譜みたいなのがあるんだなって思う。ちょっとおおげさだけど。
どうでもいいことだが、弟のところに生まれた孫が最近笑うようになって、不覚にも大変かわいい。どっかやっぱり似ているんだな、息子とかと。もしや私にも?
これまたどうでもいいが、去年の結婚式の集合写真くらいはくれたっていいんじゃない?美容院行って留袖の着付けしてもらったというのに、写真が1枚もないんだわ(^^;)