うちの煮物はとてもおいしい。
これは、けっして料理の腕を自慢しているわけではない。
また、高級な食材を使っているわけでもないし、上等の利尻昆布で出汁をとっているわけでもない。
それは、「必殺白だし」なるものを使っているからである。
最近は色んな種類の「白だし」がスーパーに並んでいて、これはとても便利である。
いろいろと試してみたが、今のところ一番おいしいと思われるものは、うちで使っているヤツである。
これがあれば、ヘタな料理でも美味しく仕上がるので、私は「必殺白だし」と呼んでいる。
以前に一度、茶懐石の料理講習会に参加したことがある。
そのときびっくりしたのが、出汁の取り方だ。それこそ（多分）上等な昆布とかつおぶしをドッサリ使って出汁を取る。
「だしの素」的なものは当然使わない。薄味の茶懐石はダシが命なのだろう。
上品でまことに美味しい料理だったが、これは家庭では使えないと思った。
家庭料理は、手軽に安くて美味しいものを継続して作れるかどうかにかかっているからだ。
この、さほどお高くない「白だし」を使うだけで質素な「かき玉汁」とかもグンとおいしくできる。
長男の彼女が前に聞いてきた。
「どうして味付けしたはるんですか？」
わたしは正直に「白だし」を使っていることを告げた。
わたしでなくてもこの味は出せるよ、と思う。
残念ながら、その彼女とはもう別れてしまったようだが。
